■食べられなくなる恐怖
■相手にショックを与えずに
口が臭いことを伝える大人のセリフ
私たち人間は、生きていく上で必要なエネルギーを食べることによって摂取しています。それだけではなく、食べることは、生で食べる原始の時代から発達して火を使う料理が開発されたことにより、「生きていくために必要な行為」を超越して、趣味や文化となってきました。
「食べることが一番の幸せだ」「今度はどこに食べに行こうか」「こんな料理を作ってみたい」と、食べること自体が「楽しみ」として追求されています。食べることはあまりにも日常的な行為であり、食べられなくなるということはなかなか想像できません。
それでは、私たちはどんなときに食べることができなくなってしまうのでしょうか?
食べ物を口に入れるとき、まず口を大きく開けます。そして歯を使って食べ物を噛み砕き、飲み込みます。したがって歯を失うことが、私たちから食べる楽しみを奪ってしまう大きな原因なのです。
■歯を失う原因は「歯周病」
1989年当時は7%程度、80歳の平均残存歯数は4~5本でした。その後、2005年の調査では20本以上の残存歯数がある80~84歳は21.1%で、85歳以上では8.3%にまで増えました。
歯を失う原因で最も多いのが歯周病。初期を含めると成人の80%以上がかかっていると言われる身近な病気です。
■歯周病は脳梗塞や心筋梗塞の原因となることも
■歯周病は脳梗塞や
心筋梗塞の原因となることも
さらに歯周病を引き起こす歯周病菌は、口の中だけにとどまらず全身の血管にも影響をきたすことが知られています。歯周病菌が出す炎症物質や毒素が歯肉から血管内に入り込み、全身の血管の老化、すなわち「動脈硬化」を進行させるのです。
脳の動脈硬化が進行すると「脳梗塞」を引き起こし、心臓の動脈硬化が進行すると「心筋梗塞」を引き起こします。この二つの病気は、日本人の死因の上位を占めるものですから、歯周病を防ぐことが将来の健康管理の第一歩と言えるでしょう。
私は仕事柄、高齢者をよく診察するのですが、総じて歯がしっかりある人は見た目も若々しく、しかも健康トラブルに巻き込まれていないことが多いです。歯の色合いも気にする70歳のおばあちゃんだっています。歯のメンテナンスを若いうちからやっていると、運動習慣や食習慣などの健康予防もしっかりと意識ができるのでしょう。
■「みがいている」ことと、「みがけている」かどうかは違う!
■「みがいている」ことと、
「みがけている」かどうかは違う!
私たちの「食べられるしあわせ」は将来にわたって実践することができます。そのためには、普段から歯周病にならないような口の中のメンテナンス「口腔ケア」に注目して、口の中の衛生管理を実践していくことがなによりも重要なのです。
仕事が忙しいことを理由に定期的な歯科健診を怠ったり、”暴飲暴食”をはじめとする不規則な生活習慣を続けることが歯周病につながります。毎日の歯みがきだけではなく、口の中の衛生指導などを行っている歯科医院に半年に一度は通う習慣をつけましょう。「いやいや、毎日、ちゃんとみがいているから大丈夫」と思っていても、「みがいている」ことと「みがけている」かどうかは違うので、ハブラシの使い方だけではなくデンタルフロスや歯間ブラシなどの歯間清掃具の使い方をきちんと学ぶことがなによりも重要なのです。
■歯周病のチェックリスト
今のところ自覚症状はない、そんなあなたも安心はできません。口臭の8割はむし歯や歯周病をはじめとする口腔内のトラブルが原因と言われていますから、まずは「歯周病セルフチェック」で、あなたのお口の健康状態を確かめてみてはいかがでしょうか(特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会 ホームページより)。
- 朝起きたとき、口の中がネバネバする
- ブラッシング時に出血する
- 口臭が気になる
- 歯肉がむずがゆい、痛い
- かたい物が噛みにくい
- 歯が長くなったような気がする
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※歯周病は歯肉炎・歯周炎の総称