「口が臭い」ことを
どう伝えればいいのか問題
「口が臭いですよ」と「鼻毛が出てますよ」は、指摘してあげたほうが相手もありがたいのはわかっていても、なかなか口に出しづらいセリフの二大巨頭です。今日も全国のあちこちで、多くの大人たちが「言うべきか、言わざるべきか……」という厳しい選択を迫られていることでしょう。
まあ、鼻毛のほうはいくら大胆に飛び出していても、こちらに実害はありません。病気との関連など、大きな問題につながる心配もありません。相手との関係やそのときの気分によって、見て見ぬふりをするもよし、さも今さっき気づいたような口調で「あれ? 鼻になんかついてるよ」と鏡を見ることを促してあげるもよし、です。
しかし、口臭のほうはそう簡単な話ではありません。あまりにもニオイがキツイと、いっしょにいることや会話することが苦痛になってくるし、ひいては人間関係の悪化につながる可能性もあります。また、歯周病や内臓の病気が口臭の原因になっているケースも多いので、早めに気づかせてあげないと深刻な事態を招きかねません。
■相手にショックを与えずに口が臭いことを伝える大人のセリフ
■相手にショックを与えずに
口が臭いことを伝える大人のセリフ
言いづらいのは確かですが、大人力を駆使して相手のショックや逆恨みを最小限に抑えつつ、果敢に指摘してあげましょう。それが大人の勇気でありやさしさです。ここでは、やんわり伝えるための3つのセリフをご紹介します。よかったらご活用ください。
その1. 「取り越し苦労かもしれないし、気を悪くなさらないでほしいんですけど、じつはウチの叔父が口の中の病気で長く苦労したことがあって、ほんのちょっとなんですが、叔父と話しているときに感じたニオイと似ている気がして…」
前置きが長くて回りくどいのは、ショックをやわらげて聞く耳を持ってもらうための大人の気づかいであり、気をつかっている様子を強調することで相手の冷静さを保つ大人の防御策。いきなりストレートに「なんか口が臭いよ」と言ったら、相手は激しく動揺して、恥ずかしさをこちらへの怒りや恨みに転嫁してくる可能性もあります。
こう言えば相手は、自分のことを心配して勇気を出して指摘してくれたんだなと理解し、腹を立てることなく感謝してくれるでしょう。もちろん口の中の病気で苦しんだ叔父さんは、架空の存在でかまいません。また、明らかにニンニク臭い場合に使っても大丈夫です。
その2. 「あれ……。(両手で自分の口の前を覆って息を吹きかけつつ)昨日の夜に餃子をたくさん食べちゃったんですけど、もしかして私の口からニオイが出てませんか?」
自分の息が原因ではないかと疑っているフリをしつつ、気になるニオイが漂っていることを間接的に指摘する作戦。相手が「いや、べつに出てないよ」と答えたあたりで、「もしかして俺の口から出ているのかも」とハッと気づいて不安に……なってくれたら成功です。相手が自分の息が原因だったという真実に気づいてくれた場合は、このセリフに込めた大人の配慮にもきっと気づいてくれるでしょう。
ただし、ぜんぜん気づいてくれないどころか、「たしかに臭うなあ。お前、ちゃんと歯みがきしたのか」と無実の罪で非難される可能性もあります。そうなっても反論するわけにはいかないのが辛いところ。「すいません」と素直に謝って、黙って泥をかぶりましょう。事態の解決にはなりませんが、大人として全力を尽くしたという満足感は味わえます。
その3. 「(お昼休みにたとえば「Lidea」など口臭について書いてあるwebページを読みながら)うわー、怖いなあ。口臭にもいろんな種類があるんですね。そっか歯周病の可能性もあるのか。歯みがきしているから大丈夫ってことでもないんですね…」
その人に話しかけているのか、ひとり言なのか、どっちとも取れる言い方をするのがコツ。老若男女の約8割が口臭を気にしているという調査結果もあるので、相手は反射的に「自分は大丈夫かな?」と心配になるでしょう。もし「どれどれ」と興味を示してくれたら、こっちのもの。「自分ではなかなか気づかないのが怖いですよね」と言えば、さらに心配になって自分がじつは口臭を発していることを自覚してくれる可能性が高まります。
とはいえ、遠回りしながら気づかせるのがいいのか、はっきり「○○さん、もしかして最近、体調が悪いってことはないですか?」と尋ねつつ、口臭が気になることを伝えてあげるのがいいのかは、なかなか悩ましいところ。相手の性格などを考慮しつつ、もっとも望ましいと思える言い方を繰り出しましょう。
■自分が口臭を指摘されたときにも、大人力が厳しく問われる
■自分が口臭を指摘されたときにも、
大人力が厳しく問われる
大人として大切なのは、「どう指摘してあげるか」だけではありません。気づかないうちに自分が口臭を発していて、周囲が思い切ってそれを指摘してくれたときにどう返すかも、大人力の見せどころ。華麗な対応で大人としての株を上げつつ、相手に「ああ、言ってよかった」と思ってもらうのが大人のマナーです。
たとえストレートに「最近、口が臭いですよ」と言われたとしても、「もうちょっと言い方があるだろ」と、ムッとするのは論外。「そっか、気が付かなくて申し訳ない」と謝った上で、「言ってくれてありがとう」と感謝しましょう。「ちゃんと歯みがきはしてるつもりなんだけど、ほかの原因かもしれないね。一度、病院で相談してみるよ」と、正面から受け止めた上で今後の方針も述べれば、大人の貫録や懐の深さを示せます。
紹介した3つのセリフのように遠回しな言い方で伝えてくれたときは、謝りつつ感謝するだけでは相手の気づかいに十分応えたことにはなりません。「そういうふうに言ってくれると、すごくありがたいよね。よく考えたなあ。さすがの大人力だね」と、言い方の工夫を称賛しつつねぎらいの気持ちを伝えましょう。
とはいえ、念入りに持ち上げるつもりで、「なかなか言えないよね」「言えるのは○○さんぐらいだよね」などと言うのは危険。チクチク責めているようにしか聞こえません。過ぎたるは猶及ばざるが如し。くれぐれもサジ加減を間違えないようにしましょう。「また気が付いたら、いつでもどんどん言ってね」というセリフも微妙。せっかく指摘してもらったのに、対策を取る気がぜんぜんないように聞こえそうです。
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